モノは「点」として見なす必要がある
ここに何の変哲もない野球のボールがあります。通常、私たちの対象認識ではボールは3次元の球体として見なされます。しかし、ヌーソロジーの空間認識は違います。こうしたモノとしての球体を「点」、つまり、0次元として見なすのです。なぜ、モノを「点」と見なすのか――その理由は、モノの周囲に空間があってこそ初めて3次元空間という概念が成立すると考えるからです。つまり、当たり前のことですが、物が占めている空間だけでは3次元空間などといったものは存在しないということです。
モノの内部と外部にどうしてこのような区別を設けるかと言うと、前回もお話ししたように、それらは互いに全く違った性格を持った空間だと考えるからです。いや、より正確に言えば、そのような概念を今から作らなければない。そう考えるからです。このようなことを考える契機となったシリウスファイルの一節を紹介しておきましょう。
モノとは何ですか?
人間の意識におけるモノとはモノの内面のことです。
モノにも内面と外面があるということですか?
はい、あります。モノの内面と外面とは、あなたがたがモノの中とモノの外と呼んでいる部分と同じです。
モノの中とモノの外とはどう違うのですか?
人間の意識では、モノの中は見えない世界で、モノの外は見える世界として認識されていると思います。
あなたがいつも「人間の意識は見えない世界に落ち込んでいる」と言ってるのは、人間がモノの中に落ち込んでいるという意味なのですね。
そうです。モノの外部へと光がもたらしている精神進化の方向性が人間の意識にはまだ見えていないということです。
(シリウスファイル)
ここでOCOTが言っている「人間がモノの中に落ち込んでいる」とは一体どういう意味なのでしょう?
前回まで話してきたように、私たちの視覚によるモノの知覚はモノとその背景空間(モノの外部空間でも構いません)の差異面、つまり、モノの輪郭の「象(かたど)り」によって起こっています。「図」と「地」という比較(差異)がなければ、対象を対象として捉えることはできないわけですから、モノの内部を構成している空間とモノの外部を構成している空間は互いに絶対的な差異を持っていると考えなければなりません。しかし、わたしたちは通常、空間を尺度によってイメージしてしまっているので、直径10cmあるリンゴと、同じく直径30cmとしてイメージされるリンゴの周囲の球空間を同じ空間として見なしがちです。
つまり、こういうことです。世界にはまず空間という大きな容器のようなものがあって、その中に小さな無数の物が存在している――モノを単なる対象へと還元してしまうこのような認識の体制、これが人間型ゲシュタルトが人間に仕掛けている催眠術なのです。この催眠術から目覚めるために用いられるのがヌーソロジーが用いている「次元観察子」という概念だと思って下さい。次元観察子は人間型ゲシュタルトによって無効にされた空間の中に潜在化している様々な次元の差異を、注意深く彫塑していくために設けられた概念であり、結果的に、この概念を創造していくことがヌーソロジーにおける思考的な実践となっていきます。
『2013:人類が神を見る日アドバンストエディション』で紹介した『トランスフォーマー型ゲシュタルト・ベーシックプログラム』にも示したように、次元観察子のシステムでは一つのモノの内部の空間はψ1~ψ2の領域に当たります。一方、一つのモノの外部の空間の方はψ3~ψ4という全く違った空間に相当してきます。つまり、モノの外部の空間はほんとうはモノの内部の空間に比べて次元階層が一つ上がっているのです。この一段階の次元の違いは観測者がいるかいないかの違いと言ってもいいでしょう。言い換えるなら、観測者が存在しない空間は観測者が存在する空間に比べて次元が一段階低いのです。そのことについて分りやすく下の図2と図3に示しておきます。
これらの図における3次元性の意味の違いを簡単に説明しておきましょう。
前回、お話したように、モノの3次元性は、モノ自身を回転させることによって観測者の視線という一本の線分の中にすべて収めることが可能です。モノを回しても背景空間が回らないのは、観測者が視覚として触れている空間がモノの空間ではなく、背景空間の方とダイレクトに対応させられているからです。試しに、モノを中心にしてモノの周囲を回ってみるといいでしょう。そのときは今度は、モノとともに背景空間の回転も起こるのが分ります。このとき回転している空間が、僕らが普通、3次元空間と呼んでいる空間なのですから、正確な意味での3次元空間とはモノからその外部に広がりを持たされた3次元性のことを指していることになります。そして、このことは、モノの観測は「空間の3次元」性において初めて可能になる、ということを意味しているわけです。ですから、モノの3次元性のみの空間には観測者は含まれていない――と考える必要があります。モノの内部のかさばりだけでは、その場所を3次元空間と見なすわけにはいかない、のです。
立体としてのモノだけの3次元と、モノの外部に広がっている3次元。次元観察子の概念を作り上げていくためには、まずは、これら両者の差異をしっかりと把握する必要があります。
――つづく。